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2012年8月16日木曜日
That’s Why God Made The Radio / The Beach Boys
新作のThat’s Why God Made The Radio(邦題「神の創りしラジオ」),1942年生まれで今年70歳という年齢の人間の想像力がここまで素敵で,年月を経ても宝石のように同じ輝きを放っていることが不思議でもあり,長いバンドの歴史を振り返って,ついついいろいろなことを考えてしまう聞き手には一層染みいってきます。出だしのハーモニーから,ボーナストラックとして入っているDo it againの再録までとても緻密に設計されていて,仕掛けも多いアルバムですが,基本の色調は,ここでも夏の終わりで,何か諦念さえ感じさせるようなの季節の終焉です。
コンサートの始まる前のぼくの気持ちをありのまま素直に表現すれば,夏だし屋外だし,音の楽しさでどうしようもないぼくらの日常を忘れさせて欲しいという気持ちが期待の半分,でも,もう半分は,消えゆく夕陽のような音の寂しさでなかなか思うにまかせないぼくらの日々の生活を慰めてもらえないかという気持ちでした。もちろん,夜とはいっても,暑い最中に球場で行われるコンサートですから,余り細かなことと言っても仕方ないし,楽しいひとときを過ごせれば,それ以上はないのですが,それにしても,メンバーの年齢からいって,次の機会はないなと観客の誰もが思っている中で,そんなセンチメンタルな想いとはまったく無関係に,立て続けに繰り出されるヒット曲のオンパレード。文字通りあっという間の90分間でした。今さらながら,ビーチボーイズには,ブライアンを中心にしたレコーディングセッションバンドとして顔と,マイク・ラブを中心にしたライブショーバンドとしての顔のまったく違う2つの面があること,そして,その一見水と油のように異なる要素の不均衡さと危うさ,緊張感こそがビートルズとの切磋琢磨以上にバンドをここまで走らせてきた原動力だったのではないかなどとふと考えた帰り道でした。
2012年(平成24年)8月16日 木曜日